現場、くらしに組合力 埼玉土建 一般労働組合

お知らせ

憲法と人権を考える市民のつどい

【埼玉土建本部】

機関紙「埼玉土建」

中国人を下に見ていた

差別が戦争中はあたりまえ

 

「若者たちを戦場に送るな」「憲法違反の閣議決定の即時撤回を」と呼びかける埼玉弁護士会が主催する「憲法と人権を考える市民のつどい」が十二月四日、大宮ソニックシティで開催、全県各地から千二百人が参加しました。主催者あいさつ埼玉弁護士会の大倉会長は、俳優の米倉斉加年さんの少年時代の体験をもとにした絵本「大人になれなかった弟たちに」を紹介、弟が戦中の食糧不足から栄養失調で衰弱し命を失う場面を読み上げ、こんな時代が来ることがないように「集団的自衛権の問題と平和の大切さを考えましょう」と訴えました。
山田洋次監督からは、自身の戦争体験や映画に描かれた戦争の時代について話があり、「戦時体制になれば表現や思想の自由が奪われる、それが戦争の恐ろしさ」と語りかけました。 中央大学の植野紗実子教授からは「憲法改正と集団的自衛権―第二次安倍政権を振り返る」をテーマに講演がありました。

山田洋次監督の講演は「母べえ」(映画)の、父が特高警察に連行される場面などを上映して始まりました。要旨は次の通りです。
「母べえ」は野上照代さん(一九二七年生)の体験をもとにした素晴らしいエッセイを映画化したものです。お父さんはドイツ文学者で神戸大学の教授でした。戦争を批判したという疑いがかかり逮捕されてしまいます。こういうことは二度とあってはならないという思いでこの映画をつくりました。
敗戦から七十年がたとうしています。戦争で地獄の経験をした人たちで何も語らずに亡くなった人も多くいます。
私は直接は戦火は経験していません。満州で育ち中国人を下に見て生活をしていました。中国人か日本人かはすぐに分かりました。中国人はとてもみすぼらしい恰好をしていたからです。港の労働者でも日本人が汗だくになって働くことはありませんでした。
私の叔父が中国人の馬車の御者(ぎょしゃ・馬車を操る人)に「代金が少ない」と文句を言われたことに腹を立てひっぱたいていました。そんな差別が戦争中は当たり前のように感じてしまうのです。
それでは平和とはなにかと言いますと、もちろんボーとして何もしない事ではありません。「男はつらいよ」で寅さんが帰ってくるとにぎやかになり難儀だが、寅さんがいなくなればそれはそれでさみしい。寅さんとタコ社長はよくけんかをしますがあとを引かない。本当に相手を傷つけない。殴ったりもしない。「出ていけ」と誰かが言うと、そのセリフは相手を排除する言葉なので寅さんは「それを言っちゃおしめえよ」と言って旅に出ていくのです。
いまの世の中は言い争いをすると人間関係が途切れてしまうことがよくあります。そうではなくて地域や仲間の中で違った意見を言いあい論議できる関係をつくること、それが平和ではないか。日本のように国際紛争を武力で解決しないという国は、仲裁役を買って出られるような国になりえるのではないかと思います。

植野紗実子氏の講演の要旨は次の通りです。
戦争の体験を風化させない事はとても大切です。私の母は気仙沼の出身でした。戦争末期は軍艦がなく漁船をそれを操る人と一緒に徴用しました。すぐ近くに米軍がいて目の前で沈没させられてしまい、毎日のように葬式が行われていたそうです。戦争は理不尽なもので二度と繰り返してはいけません。
立憲主義とは憲法にもとづいて政治がおこなわれるということです。憲法を無視すれば立憲主義とは言いません。フランス人権宣言に書かれている権力の分立が必要です。政府と議会、裁判所です。議会には国民の声が正しく反映している事が必要です。政府には憲法擁護義務があります。憲法は国民が守るのではなく公務員や権力者を縛るものです。違憲審査制も大切です。
忘れてはいけないのは安倍政権が憲法改正の話から始まっていることです。二〇一三年四月に安倍首相は憲法改正を語っています。自民党の憲法草案には九条二項(戦力の不保持、交戦権の否定)が削除されています。これは軍の存在を明示し、軍事予算を増やし、徴兵制も可能にすることにつながります。国際関係に影響し経済的に影響を受けることも予想されます。
私は平和主義的政策の推進こそが、国民が安全で安心できる社会を構築でき、経済的発展がすすめられる道だと思います。現状では国民に問題点をオープンにして論議することが必要なのに何が問題なもかわからない、民主主義とは呼べない状況があります。今考えなければならないのは雇用の安定であり、高齢化社会に向かって暮らしやすい街づくりです。非正規労働者を増やす政策は憲法の生存権が十分に保障されているとは言えません。今こそ憲法の基本原理が守られることが必要です。

このページの先頭へ
現場、くらしに組合力 埼玉土建 一般労働組合 Copyright SAITAMADOKEN. All rights reserved.