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  • 地域建設産業の再生と振興のために 埼玉土建の提言(第2次)

地域建設産業の再生と振興のために

 今、建設産業の疲弊・衰退は激しく、特に地方・地域の建設業界は、企業も、建設職人もともに存亡の危機にあります。

 建設投資がピーク時(1992年84兆円)より37兆円減少、公共事業も約半減し、そこに2006年の建築基準法の改正による「確認遅れ、着工遅れ」で一気に仕事がなくなり、そして2008年の世界金融危機が襲いました。注文住宅・建て売り住宅・マンションやオフィスビルの建設が大きく落ち込み、かつて経験したことのない「建設全部が不況」の状況にあります。地域の企業の倒産も増えています。

 この背景に「構造改革」をおしすすめた政治があり、建設産業にも大きな困難をもたらしています。そして今「景気回復には内需拡大で」としていますが、政府はGDP60%近くを占める国民の購買力をあたためる政策をとろうとはしていません。いまこそ国も自治体も地域の建設産業の再生と振興に真剣に向きあう時であると考えます。


 埼玉土建(埼玉土建一般労働組合・8万人)は、これまで国会議員要請行動や請願署名等で国・国会へのはたらきかけを強めてきました。また、自治体に緊急対策を求め要請をすすめてきました。

 特に、今年春、国土交通省の補助事業に協力し、広く地域の住宅を調査しアンケートを実施しました。その結果リフォームの際、耐震対策、省エネ、バリアフリーなど高齢対策等に関心が高く、また、仕事を依頼する場合地元の業者への期待が圧倒的に強いことが明らかになりました。埼玉県内には70万戸もの耐震不足の住宅があります。公共施設の耐震改修も約半分で、小中学校の耐震改修は約6割にとどまっています。

 私たちの住む地域に目を向けると、市町村の管理する橋の84%は、この5年間、一度も点検されていません。全国で落橋事故や通行規制される橋が増えています。下水道管が破損し、大規模な道路陥没を起こしています。インフラの整備が遅れ、対策が講じられていないのが現状です。


 今、地域の公共事業に求められているのは、大規模開発のムダづかいをやめ「住民生活の安全・安心」を最優先課題に「生活密着・福祉型」へ大きく方向転換することではないでしょうか。

 私たち埼玉土建は、地域住民の願いに応え、安全・安心な生活環境、災害に強い街と快適な住宅・建築物を、建設業界や行政と協力して作っていきたいと願っています。

 この提言は地域建設業界と行政に私たちが発信する、地域建設産業の再生と振興を願うひとつの提案です。ご検討いただき、ご意見をいただければ幸いです。


1. 地域の基幹産業・建設産業の危機に向き合う行政に

 大手ゼネコンが作る高速道路や新幹線、空港や港湾、そしてダム。日本の高度成長を象徴する建造物です。57年も前に計画され、今や必要のない八ツ場ダム[i]に象徴されるムダな大規模工事は再検討を加え中止や延期すべきです。危機にひんしている地域の建設産業と生活関連公共工事にその財源をふりむけ、地域建設業の再生・振興をはかることを提言します。


1-1 国の公共工事にもっと地方の声を反映できるシステムを

 国の公共事業[ii]は、国交省が計画し、県や政令市はこれに従って事業費の2分の1から3分の1を「直轄事業負担金」として国に支払い続けています。圏央道[iii]に毎年100億円、八ツ場ダム、国道や河川改修の他事務所の立て替えや人件費まで、埼玉県は総額300億円以上を毎年、負担しています。これは県の公共工事の2割にもなります。

 広域におよぶ事業は全額、国の予算でまかない、地方に負担させるべきではありません。

 そもそもこれらの事業の計画段階から、事業の必要性・優先順位・住民や地域への貢献度・環境への影響、財政などを地方の意見をふまえ公開の議論で決定する仕組みに改めるべきです。


1-2 地域に向きあう生活関連の公共工事は、地域建設業の再生・振興につながる

 地域の建設業は、その街をつくる大きな役割を果たしています。しかし、厳しい状況が続く中、倒産・廃業に追い込まれ、その街にとって大きな損失となっています。公共工事の発注は地元の経済活性化と、地元企業の育成の観点が必要です。生活に密着した公共工事を地元企業に発注することで、地域建設業の再生・振興につながります。



2. 大規模開発より維持・補修が優先した安全・安心の公共事業へ

 これまで作られた社会資本の維持・補修が緊急の課題になっています。国民の安全・安心にとっても重大な事態が進んでいます。市町村の管理する橋の84%(7万橋)が過去5年間1度も点検すらされていません。全国で1000もの橋が通行止めや通行規制になっている状況です。

 下水道も寿命50年と言われながら、点検が遅れ、大規模な道路陥没が各地で起こっています。住民と街の安全が公共事業に求められています。

2-1 橋や下水道の点検・補修こそ公共事業の最優先課題に

 全国の道路橋数は橋長15m以上で、約14万8千橋あり、旧公団管理が約6千橋(4%)、国管理が約1万1千橋(7%)、都道府県管理が約4万5千橋(31%)、市町村管理が約8万6千橋(58%)で、90%以上が都道府県・市町村管理となっています。

 川越市のびわ橋、さいたま市(旧大宮市)の大成跨線橋が通行止め・通行規制になっています。こうした埼玉県内で分かっているだけでも、通行規制や通行止めの橋が31カ所あります。住民生活の安全・安心に大きな役割を果たす橋や下水道のメンテナンスを最優先にやることが今、自治体に求められているのではないでしょうか。

2-2 地域の企業、土木技師など専門家の協力を求め、橋・下水道の点検を

 埼玉県内でも山間部ほど橋や道路が多く、住民生活にとっても重要なインフラ[iv]です。地域にはこれらに対応できる専門企業や技術者がいます。市町村はこうした専門家の協力を得て点検・補修を重視した公共事業を進めることが求められます。



 これらのため、法律の整備と財政の確保が求められます。「安心・安全」のまちづくりという社会的要請に応じた、人材を育成することが、必要ではないでしょうか。


3. 大規模地震、災害にも耐えられる街住民を守る行政に

 「阪神・淡路大震災」では6433人が亡くなりました。そのうち87%が家屋倒壊によるものでした。

 埼玉県で近い将来に予測される「都心西部直下型地震」[v]では、住宅1万6千棟が全壊、1600人が死亡し、重軽傷者は5万人と埼玉県は予測しています。

 埼玉県内260万戸の住宅のうち70万戸は耐震基準を満たしていません[vi]。耐震改修が必要です。学校など公共施設の耐震化もまだ約半分ほどに過ぎません。ここでも「安全・安心」のあり方が問われています。

 大規模な災害は、人命や社会生活だけでなく、経済産業にも大きな被害をもたらし、これらの再建には、莫大な費用を必要とします。災害・震災に備える対策によって、予防が出来ます。自治体の優先課題として位置づけを高くしていくことが求められます。

3-1 住宅の耐震診断・耐震改修の助成制度をすべての自治体に

 埼玉県は「耐震改修促進計画」で2015年までに住宅の耐震化率90%をめざし、09年までにすべての市町村で耐震促進計画を作るとしていましたが、計画の策定は20市4町(34%)にとどまっています。

 耐震診断助成は23市5町(40%)、耐震改修助成は18市2町(28%)、診断と改修両方実施しているのは14市1町(21%)しかありません。すべての自治体での早急な実施を強く求めます。


3-2 耐震基準、評点1.0以下の改修でも助成の対象にするべきです

 耐震改修へ助成を行っている自治体でも、家屋全体の改修で耐震評点1.0以上[vii]などの条件が、住民の負担を大きくし、改修がすすまない大きな要因となっています。1981年以前の建物は耐震基準を満たしていません。こうした住宅には高齢者世帯等が多く、大規模な改修工事にはなかなか踏み切れません。

 屋根を軽くする、寝室や避難路など部分的な耐震改修でも最悪の事態を避けることができます。こうした部分的な改修でも、助成の対象にすべきことを検討する必要があります。

 簡易な耐震診断にも、助成の対象にし、耐震促進がはかれるよう、自治体の対策が必要です。



3-3 「家具の転倒防止金具」の取り付けを耐震改修の一歩に

 阪神淡路大震災では、タンスやテレビの転倒が多数の圧死・重傷者をだす原因ともなりました。家屋の倒壊とともに家具の転倒も危険です。家具の固定はわずかな材料費や工事費で済み、被害を減らすことができます。

 町内会、老人会、住民団体などと地域の建設労働組合・団体、そして行政の三者が連携し家具の転倒防止対策を早急にスタートすることを提案します。これは、本格的な耐震改修のきっかけにもなります。私たちは身近な「家守り」として役割を果たしたいと考えています。


3-4 震災時にむけた「災害救援」体制づくりを呼びかけます[viii]

 震災時には、最も重要な直後の救援活動が必要です。救援に必要な道具、重機、発電機、車両などを保有する埼玉土建の組合員が地域にいます。建築物の構造にも知識があります。阪神淡路大震災時には、地域の建設職人が多くの人々を救援した教訓があります。



 埼玉土建は阪神淡路大震災や新潟中越地震にも救援・応急活動に参加した経験があります。本部は県と、支部は市町村と、分会(班)は町内会などと「震災救援協定」を結び、災害から地域を守る活動に参加したいと考えています。


4. 住宅改良(リフォーム)に多角的な行政の支援を

 この春、埼玉土建は国交省の補助事業で地域の住宅調査を行い、25万3千件を調査、7400世帯にアンケートを行いました。その結果、(1)耐震補強工事、高齢化に伴うバリアフリーの要求が強くあり、(2)自治体に助成を求める声も多く寄せられ、(3)住宅をリフォームする際は「地元に依頼したい」が82.7%と圧倒的に高く、「安心・安全」「信頼」を求めていることがわかりました。

 住宅リフォームの場合、その経済的効果は平均約17倍と言われています。地域の振興のうえでも建設産業の果たす役割は大きいものがあります。
 住民の住宅改良の願いに、自治体の施策が強く求められています。


4-1 住宅リフォーム助成制度をすべての自治体で

 埼玉県内では14市10町で「住宅リフォーム助成制度」[ix]が実施されています。この数は全国で第1位です。深刻な経済悪化、雇用不安の中、住民はリフォームの希望はあるがかんたんには手が出せない状況におかれています。今、行政の後押しが必要ではないでしょうか。住宅建設のおよぼす経済的波及効果は高く、広く他産業・業種におよんでいます。住宅リフォーム助成制度では、ほぼ17倍の経済的波及効果がもたらされてきました。

 安全・安心のまちづくりと、建設産業の振興のために行政が積極的にかかわるべき時ではないでしょうか。


4-2 耐震改修、高齢化対応、介護の開始に合わせて、繰り返し助成を

 住宅リフォーム助成制度が、1世帯1度しか利用できない自治体が少なくありません。助成額もけっして大きくありません。これをくりかえし利用できる制度に見直しが必要ではないでしょうか。さらに耐震改修や、65歳以上の家族がいればバリアフリーや手すりの取り付けなど、また、要介護や障害者世帯にも対応したリフォーム助成が利用出来るように、住民の立場に寄り添う制度に改善が求められます。

 また、介護保険からの助成や耐震改修から助成など、さまざまな制度と組み合わせた上乗せ助成も有効です。



5. 「小規模公共工事」こそ地域を守り、地域建設業を救う

 地域・生活密着型・福祉型の公共事業は、地域の建設業の仕事と雇用の創出につながります。中小建設業の振興をはかり、地域が元気になるよう、小規模工事に光をあて、産業の活性化をはかる必要があります。

 地方自治法で認められた、「130万円以下の公共工事は入札によらず随意契約で発注できる」を制度として確立したのが「小規模工事登録制度」[x]です。埼玉県では70自治体中67自治体が実施しており、この数は全国1です。

 県内の3600の登録業者に1万5千件の仕事が発注され、1年間で13億円の工事が施工されました。これらの工事は地域の住民の生活に密着したもので、住民、業者、行政がひとつになった、地域に役立つ公共工事です。街の安全・安心を広げ、公共施設を長持ちさせるこの制度をさらに拡充発展させる必要があります。


5-1 公共施設長と住民から「街のチェックシート」を行政が受け付けるシステムを

 学校長や保育園長が管理している施設の痛んだ部分をチェックシートで行政に提出してもらい、集約した内容から優先順位をつけ、小規模登録業者に発注する、この仕組みはすでに県内の市で行われています。

 また、町内会に地域の道路や橋、フェンスなどの不具合を市に報告してもらい、同様に小規模登録業者に仕事を発注する市もあります。広く住民団体に呼びかけ、住民の協力を得て公共施設の維持・補修を中心に、街を守る公共事業をすすめるべきです。埼玉土建も建設の専門家集団として協力し役割をはたしたいと思います。


5-2 「小規模」に求められるいくつかのルール

 一つは、随意契約だけに癒着や不正を生まないよう、事業内容の公開の徹底が必要です。二つには、零細業者を守る意味からも入札参加業者の参入は適当ではありません。発注は登録業者に限定し、広く仕事がいきわたるようにすることがもとめられます。三つには、発注にあたっては適正な人件費や経費を積算し、ダンピング発注にならないよう配慮が必要です。


6. アスベスト被害から住民を守るために

 地域・生活密着型・福祉型の公共事業は、地域の建設業の仕事と雇用の創出につながります。中小建設業の振興をはかり、地域が元気になるよう、小規模工事に光をあて、産業の活性化をはかる必要があります。

 地方自治法で認められた、「130万円以下の公共工事は入札によらず随意契約で発注できる」を制度として確立したのが「小規模工事登録制度」[x]です。埼玉県では70自治体中67自治体が実施しており、この数は全国1です。

 県内の3600の登録業者に1万5千件の仕事が発注され、1年間で13億円の工事が施工されました。これらの工事は地域の住民の生活に密着したもので、住民、業者、行政がひとつになった、地域に役立つ公共工事です。街の安全・安心を広げ、公共施設を長持ちさせるこの制度をさらに拡充発展させる必要があります。

6-1 アスベスト除去助成制度の創設とアスベスト暴露から住民を守る

 アスベスト被害が社会的問題化するなかで、民間建築物の吹き付けアスベスト等の除去は、ほとんどすすんでいません。アスベストを使った建物の解体は、所有者ばかりか近隣住民が暴露する危険さえあります。

 自治体は近隣へ汚染が起こらないよう、民間住宅の解体に対して「解体工事への助成制度」を創設し、アスベストの適正処理をすすめることを解体業者に啓蒙し、また地域住民にもアスベストに対する知識を啓蒙することが必要です。

 また、吹き付けアスベスト等をつかった多くの人が利用する施設の改修にあたっては、適正処理のために必要な養生費、設備費、廃棄物処理費を本体工事と別枠化するなど、アスベストが適正に処理される契約システムをつくるべきです。


7. 入札制度の改革で、建設業界の育成と安心・安全な建築物、まちづくりを

 「談合防止」から入札制度が変えられてきました。その結果、無制限な競争ダンピングが広がり、受注しても赤字となり、建設企業の経営悪化、建設労働者の賃金がおさえられ、労働条件の悪化をまねいています。

 建設産業の危機的状況を直視し、建設産業は地域にとって基幹産業で必要なものであり、育成し、発展させていく立場で、入札制度とはどうあるべきか、考えてみたいと思います。


7-1 全国知事会の「一般競争入札指針」はやめるべきです

 05年に全国知事会が打ち出した「指針」は、談合防止をうたい、予定価格の事前公表や電子入札、一般競争入札の導入と拡大を自治体に求めました。しかしその結果、極端なダンピング受注がひろがり、安値競争が産業の基盤を揺るがしているのです[xi]。低価格競争をもたらす「全国知事会指針」は産業の発展のうえで、これを阻害する大きな原因となっています。


7-2 価格だけでなく地域貢献度などを評価した「総合評価制度」へ転換を

 自治体との防災協定や地元雇用率などの地域貢献度を高く評価することや現場労働者の賃金水準(東京・日野市[xii])福利厚生、高齢者雇用率の高さなどをとりいれ、「総合評価方式」を採用し、合わせてダンピングを招かない地域建設産業を守る公共工事に転換すべきです。


7-3 積算の適正化をはかり、予定価格の事前公表はやめる

 予定価格の事前公表は、かえってダンピング競争になっています。入札時には工事内訳書(材料費、管理費、労務費)の提出を義務化として、入札後には公表し、適正な積算であるかを検証できるようにすることが必要です。これらは、同時に企業の積算能力の向上にもつながります。適正な現場賃金や経費、利益が必要です。


7-4 「低入調査制度」はやめて、最低制限価格制度を厳密に実施する

 「低入札価格調査制度」はダンピング受注を容認・奨励するものです。「落札率85%でも一部赤字(07年・冬柴国交大臣)」と国も認めています。最低制限価格を少なくても90%に設定し、それ以下は失格とし、厳密に運用することが必要です。


7-5 予定価格の上限拘束性はやめ、会計法・地方自治法の改正を

 予定価格は「二省賃金」や「建設物価調査」から得られた「平均値」を基に積算されています。しかし、会計法はこの平均値である予定価格を上回った入札すべてを失効と規定しています。諸外国[xiii]でも「予定価格は参考値」としています。単純な入札金額の競争ではなく、入札時の企業の提案内容も検討して入札・落札できるよう、法改正が必要です。


7-6 落札者の決定は「公共工事業者選定委員会」が行います

 受注希望企業の中から施工能力や「地域貢献」、過去の受注実績も加味し、共同受注もふくめ、最も適正な受注企業を「公共工事業者選定委員会」(仮称)が選定する仕組みに変えていくことが求められます。委員会の構成は、不正や癒着ワイロなど政治的犯罪の入り込む余地のないよう、完全に公開された中で検討を行い、行政、業界、議員、市民の専門家などで構成します。そして最も地域と業界の発展に適した受注企業を選定します。


8. 建設産業と建設労働に新たなルールを

 建設産業は、大手ゼネコンを頂点に、日本独特に構造がつくられ今日に至っていますが、実際にはルールが守られず、下請や現場労働者にしわよせされ、結局は産業そのものを弱体化させています。

 労働者の賃金や労働条件、休日などに一定の水準を確保し、運用する地域労働協約が建設産業に必要です。地域労働協約は、労働団体と経営者団体が一定の地域内で結ぶ労働協約です。

 また、公契約条例[xiv]は、市町村や県単位に制定する法律で、公共工事において賃金・労働条件を一定水準以上にする法律です。すでに全国で4割を超える自治体・議会で、国に対して法律制定を求める意見書が上げられ、この制定をめざす動きがでています。


8-1 地域労働協約締結で、安心した産業に

 重層構造の中で雇用関係が不明確になっていることから、賃金をはじめ不安定な労働条件の大きな原因となっています。

 埼玉県内には10万人の「全建総連組合員」がおり、「建設作業員」の71%に達しています。

 労組法18条では、「地域の大多数を組織する労組と業界団体の間で「地域労働協約を締結できる」と定めており、今日の現実的な課題となってきました。ルールある建設労働は、現場労働者の安心をつくり、雇用関係の改善、さらには産業発展の源をつくるものにつながります。建設業界協約の締結をはじめ、今日の建設労働のルール化等について対話と懇談をよびかけます。


8-2 公契約条例の制定で、公共工事の賃金確保を

 地域労働協約で定める労働条件は、公契約条例の中には優先的に組み込まれなければなりません。厳しい競争で労働者を犠牲にする異常な状態にピリオドをうちたいと願っています。労働協約も公契約条例も労働者に利益をもたらすとともに、企業にとっても異常な競争を避けることができ、入札制度のあり方にも影響をおよぼすことになるでしょう。これは建設産業の発展にも寄与します。


8-3 「地域労働協約、公契約条例の実現」でルールある産業を

 施行能力と人材育成力、管理能力のある小規模事業主、一人親方の所有している車両や道具、作業場などを適正な経費として積算し、労働賃金に上乗せして受け取ります。

 一次の専門工事会社のもとに労働者と形式的には「横並び」で現場ごとに雇用契約(雇い入れ通知書の交付を受ける)を交わします。こうして現場での重層関係を緩和し、そしてなくすことで、事業主は従業員より今より良い労働条件を保証でき、自らも経費や管理費、人材育成費などを適正に評価され、労災保険料などの負担も軽減されます。そして安心して経営に専念できます。

 小規模事業主は形式的には「グループ請け」のリーダーと同じ立場になりますが、重層関係が無くなるなかで、現在よりももっと能力が評価されることになります。私たちは、建設産業の大きな弱点であった「重層下請構造」は本来、無くすべきだと考えています。そして同時に事業主が安心して従業員といっしょにがんばれる産業にしたいと考えています。
 関係者のみなさんのご意見をぜひ、お聞かせ下さい。

補足資料


[i] 八ツ場ダム建設1952年に計画され、流域住民の反対を押し切ってすすめられているムダな公共工事の代表的な事例。2004年には当初計画を見直して、その規模を2110億円から4600億円に拡大。この変更に応じて受益者として指定された利根川流域の1都5県が一部負担金の拠出を決めた。埼玉県はこのうち180億円を負担し、昭和42年から平成27年まで38年間にわたって払い続ける。平成21年度は8億7000万円を拠出。

 1都5県とは、東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、群馬県、栃木県。このすべての地域でダム工事の差し止めを求める住民訴訟がおこされている。また、この1都5県のうち一つでも反
対があると工事はストップする。大戸川ダムのように必ずしも関係する都県が全て合意する必要はない。



[ii] 国による直轄事業は、一般会計・建設国債・財政投融資特別会計・道路特定財源などを主な財源にしている。建設国債とは、道路や住宅、港湾、情報通信網などの公共事業の財源にあてるために発行される国債。建設国債を使って建設する施設は後世にも残り、利用できるが、赤字国債は後の世代にツケを残すだけだとして、建設国債と区別している。

 経済発展のための先行投資ではなく、事務経費や人件費の不足など、国家財政の赤字を補うために発行される国債は「特例国債」「赤字国債」という。赤字国債はインフレの原因になるとして原則的に禁止されているが、毎年特例法を制定して発行している。

 財政投融資制度とは、大蔵省資金運用部(現 財務省)が郵便貯金や年金積立金などの資金を全額預かり、資金運用部から特殊法人(公庫や公団など)に融資する制度。特殊法人は、このお金を、高速道路や空港などを建設する大型事業や、中小企業の事業資金、国民の住宅建設資金などへ融資してきた。

 これまで、特殊法人は資金運用部から自動的に資金の流入を受けてきた。自主的な資金調達を行う必要がなかったため、市場のチェックを受けることがなく、経営が不透明であるといわれてきた。また、官庁の役人が特殊法人に再就職(天下り)し、高額の退職金を受け取っていることも問題となった。

 2001(平成13)年4月1日、「資金運用部資金法等の一部を改正する法律案(2000年5月24日成立)」が施行。これにより、大蔵省資金運用部は廃止され、郵便貯金や年金積立金などを預託する制度も廃止となった。郵便貯金などは、金融市場で自主的に資金運用し、特殊法人は財投機関債を発行して金融市場から自主的に資金調達を行う。

 財投機関債とは、特殊法人が自らの信用力で発行する、政府保証のない債券。したがって、市場から資金を調達するためには、経営内容などの情報を公開し、市場のチェックを受けて、信用力を高めることが必要になる。

 しかし、業績悪化などから財投機関債を発行できない状況にある特殊法人には、政府保証債の発行を認め、さらに、財投機関債・政府保証債においても資金調達が困難な場合には、政府が財投債を発行して調達した資金を融資する措置が採られる。財投債とは、特殊法人に融資するために、財政融資資金特別会計(2001年4月に新設)が国の信用で発行する国債。

 道路特定財源制度は、昭和29年度より、ガソリンにかかる揮発油税が道路整備の特定財源とされたことに始まる。その後、石油ガス税、自動車重量税、地方道路税、地方道路譲与税、石油ガス譲与税、自動車重量譲与税、自動車取得税、軽油引取税と拡大し、受益者負担による道路整備を名目に、道路建設の財源として道路特定財源諸税は創設・拡大されてきた。



[iii] 不要・不急の工事として「圏央道」の建設が進められているが、総額1兆650億円のうち埼玉県内を通過する分の負担金として総額159億円を負担することになっている。県はこのうち平成21年度分として100億円を払う。埼玉県はこれらの工事を含めて県土整備部に関係する部分だけでも281億円の負担金を予算化して払う。上田知事の予算提案に県議会は圧倒的賛成多数で支持された。



[iv]  インフラ

インフラストラクチャー【infrastructure】産業や社会生活の基盤となる施設。道路・鉄道・港湾・ダムなど産業基盤の社会資本、および学校・病院・公園・社会福祉施設等の生活関連の社会資本など。インフラ整備では京都府が先進的な施策を実施。住民の安全や安心にかかわる身近な事業に限定し、通学路へのガードレールや信号機の設置、道路の段差解消、河川の防護柵の設置など、快適な住環境の建設に向けて必要だと思う事業を府民から公募して決めている。工事規模も年度内で施工できる小規模な工事に限定。



[v] 都心西部直下型地震 中央防災会議首都圏直下地震対策専門調査会(平成17年3月内閣府)が被害想定。マグニチュード6.9、最大震度6強。



[vi] 埼玉県の住宅耐震化の現状 平成15年に実施された住宅・土地統計調査等を基に推計した平成17年度末の住宅の耐震化の現状は住宅総数約260万戸のうち耐震性のある住宅が約190万戸。したがって70万戸は耐震性を満たしていない(19年3月発表の埼玉県建築物耐震促進計画から)



[vii] 総合評点 耐震診断の結果の総合的な評価。その基準となるのが、平成16年7月に日本建築防災協会により発行された「木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づく「耐震診断基準」。建物の実施調査をもとに壁の配置や壁の強さ、老朽度、建物そのものの耐震性を数値化したもので、保有耐力と必要耐力の関係が1:1になる評点1.0が耐震性能の基準となる。評点1.0は、震度6の揺れに対して「一応倒壊しない」レベルのこと。家は傾くかも知れないが、倒壊まではしないという強さを表す。



[viii] 建設業は、地域の社会資本の整備を担当するだけではなく、災害時の緊急・応急対策や復旧工事など、地域にあって地域を支える様々な役割を担っていて、これからもその役割が期待されていることは明らかである。かつては、自治体との有機的な関係から災害対策は、地域にある建設業者にとっては当然の社会的貢献として採算を無視してでも参加していく関係にあり、災害時の建設業界の地域貢献は計り知れないものがある。それを今こそ、構築していく必要がある。



[ix] リフォーム助成制度 19都道府県83自治体で実施。地域住民が住宅のリフォームを行った場合にその経費の一部を自治体が助成することにより、住宅の改善を容易にすると共に、中小零細事業者の振興をも図る。



[x] 小規模工事登録制度 全国411自治体で実施。埼玉県は70自治体中、67自治体で実施。入札参加資格のない中小業者を登録し、自治体が発注する小規模な工事・修繕などに受注する機会を拡大する制度。地域経済活性化につながっている。



[xi] 談合防止に偏重した一般競争入札制度の強引な導入によって、一気に競争が激化した結果、低価格での入札が続き、不調・不落が発生。埼玉県でも、落札者以外が全て予定価格を超えて入札するという不落・不調となる事例が2007年4月から10月までの7ヶ月間に16件発生。それが労務単価の低下(山形県がおこなった実態調査結果による)となって現れ、建設労働者の賃金を切り下げるという負のスパイラル(循環)を招いている。

 地域の実態や入札制度の歴史的な経過を無視した強引なやり方は県下の地域建設業を疲弊させ、地域経済にも大きな影響を与える。また、建設企業の収益力の低下は、下請へのしわ寄せや賃金の低下、労働災害への不安を生じさせるなど、労働環境や企業としての技術力の低下を招き、それは結果として公共工事の品質低下となって現れることになる。



[xii] 日野市は、労働組合や市職員、市民で検討会を重ね「総合評価方式実施ガイドライン」を作成。平成20年8月に発表して同年から試行するとしている。



[xiii] 現在、国や地方自治体が発注する公共工事は、会計法や地方自治法により、入札における落札者は予定価格を上限とする入札額でなければならないことが規定されている。欧米では歴史的にも予定価格を参考値としており、予定価格を超えても落札している。また、民営化された高速道路5社(本・四架橋高速道路会社を除く)のうち4社までが予定価格を「契約目安価格」と読み替えて上限拘束を排除し、予定価格を超えた入札額でも落札させるという決断をしている。予定価格を1円でも超えれば排除するという硬直した制度は廃止すべき。

 明治22年に発布された会計法は、その後“安いがための”弊害、つまり手抜き工事、現場放棄などが鉄道軌道建設工事で問題となり明治33年にはその矛盾を解決するべく「最低制限価格制度」を発令した歴史を持っている。このときの下限設定が2/3から9/10という範囲で、設定された制限価格を下回って入札した者は排除し、不良・不適格な業者を排除すると同時に原価割れでの競争を回避することも出来たのだと思われる。現在もこの制度(基準)が生きている。



[xiv]  「公契約法(条例)」は国連決議94号条約で規定しているように国や自治体が契約の一方となる契約を指し、労働条件を守ることを目的とした決議。アメリカで1933年に連邦法として制定されたデービス・ベーコン法が元になっていると言われている。日本は未だに批准していないが、世界では先進国を含めて55カ国が批准している。これは公共工事で働く労働者を「これ以下の賃金で働かせてはならない」という規制で賃金水準の下支えをおこなおうとするもの。

 公契約条例によって最低賃金が設定されるときには、同時に現在の入札制度が根本的に改善され、落札した業者に適切な(必要な)利益がもたらされ、職人・労働者には決められた「最低賃金」を下限とする賃金が払える入札制度になっていなければならない。



「最低賃金」とは何か。最賃法に基づいて設定される“最低賃金”とは根本的に違って、ここでいう「最低賃金」とは設計労務単価。ここでは、『市場調査した結果としての(平均値としての)賃金単価』という一般的な認識を前提に「最低賃金」と呼ぶ。そして「この金額以下では働かせてはならない」という規制(公契約条例)が実行されれば、よほどの景気変動でもなければ、市場の平均は毎年上がっていく。
 そういう入札制度の下で受注し施工する建設業者は、社会的要請に応えられる事業体でなければならない。それは、社会保険等を含む労働条件の積極的な確保であり、地域の社会資本整備の一翼を担い、継続的な維持管理にも責任を果たし、労働者の地元雇用や地元産建材の採用など、循環する地域経済の振興にも貢献するという、極めて高度な要請に応えなければならない。このことが実現できる社会環境(条件)を政治・行政・業界・労働組合が同時に進めてゆくことが必要。