▼シリーズ 「アスベストと私たちの仕事、くらし」

アスベストとは? 作業上の注意、ばく露対策
特別教育の受講を 石綿の危険性
労災認定 アスベスト暴露を認めさせるために

▼シリーズ第1回 アスベストとは?

 アスベスト(石綿)被害が次々と明るみに出ています。今号から数回に分けて、アスベストはどういうものか、どういう被害があるのか、仕事上の注意点、お客さんへの説明の仕方、法規制の内容、労災申請などについて連載していきます。

◆アスベストとは?ー8割が建材に使用、刺さった繊維で疾病に

 アスベスト(石綿)は、天然の鉱石から作られる繊維です。角閃石(かくせんせき)から作られるクロシドライト(青石綿)・アモサイト(茶石綿)、蛇紋岩(じゃもんがん)系のクリソタイル(白石綿)などが有名です。
 アスベストには、1熱や電気を通さない、2摩耗しにくい、3酸やアルカリに強い、4不燃性・耐熱性、5腐らず、変質しにくい、などの性質があります。また、繊維であるため糸や布にできる(だから「いしわた」とも呼ばれます)という特徴を持っています。

◆どういうものに含まれているか

 こうした性質から、耐火建材・保温材・断熱材・吹きつけ材などの建築材料として、幅広く使われてきました。輸入したアスベストの80%は建材として使われています。
 鉄骨や壁に吹き付ける吹きつけアスベストや石綿含有ロックウールなどの他、屋根(カラーベスト・コロニアルスレート板など)、天井や内装(ジプトン・フレキシブルボード・ケイ酸カルシウム板・耐火ボードなど)、床(ピータイルなど)、外壁(サイディング・モルタル混和剤など)、配管・ダクト(トミジパイプ・石綿布・各種保温材)等々、ほとんどの建材に使われています。

◆どういう病気を引き起こすか

 アスベストの繊維の直径は0・02ミクロン~数ミクロンときわめて細いため皮膚から突き刺さったり、呼吸を通じて肺に刺さったりします。刺さった繊維は細胞を刺激し続け、長い間にさまざまな障害を引き起こします。
 肺が弾力性を失い硬化して呼吸できなくなる「石綿肺」は、石綿を吸入して10年以上たってから、肺ガンは20~30年後に、胸膜・腹膜・心膜にできる悪性腫瘍の「中皮腫」は平均40年弱で発症します。長期間経過後に発症すること、発症したら根本的な治療法がないことが特徴です。
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▼シリーズ第2回 作業上の注意、ばく露対策

◆作業上の注意

 もっとも注意すべきは、繊維が飛散しやすい吹きつけアスベストです。アスベストが吹きつけられた天井裏にもぐる電工・ダクト工・配管工は危険率が高い職種です。
 壁・天井の断熱材・保温材に接する機会の多い内装工・軽天工、モルタル混和剤や吹きつけ蛭石(ひるいし)を使ってきた左官屋さん、吹き付け工も発症率は高くなります。
 アスベスト繊維を固めた「成型アスベスト」(ボード類)も、切断・破砕により繊維が飛散します。サイディング工、屋根工、ボード工はもちろん、解体工や大工さんも要注意です。ケイカル板や石膏ボードにも石綿は含まれています。したがって、上記の職種といっしょに仕事をする全職種が、危険にさらされています。

◆ばく露対策・飛散防止

 アスベスト繊維は呼吸器・消化管・皮膚から体内に侵入します。したがって、対策の基本は繊維を吸い込んだり、体に付着させないようにすることです。
 アスベスト作業は、危険性により、レベル1(吹き付け石綿の除去)・レベル2(保温材・断熱材の除去)・レベル3(ボード類などの成型アスベストの切断・解体)に区分されています。作業レベルにあわせ、1.専用マスク(レベルに合わせたもの。通常のマスクは不可)、2.保護衣(レベル1・2は専用保護衣。レベル3は繊維が付着しない材質のもの。いずれもフード付き。シューズカバーも必要)吹き付け石綿除去は専用保護衣、)を使用します。
 レベル1・2の作業では、通勤着から保護衣に着替えるためのスペース(クリーンルーム)を現場に設置します。レベル3も含め、家族への二次汚染を防ぐため、保護衣・マスクは自宅に持ち帰ってはいけません。洗濯も現場で行い、古くなって使えないものは二重に袋詰めし、「石綿付着」のシールを貼って処理業者に渡します。    近隣への飛散防止対策としては、レベル1・2では解体・改修現場の遮断(ビニルシート等で密閉)、フィルター付きの吸塵機や負圧濾過(ろか)装置の使用、レベル3では現場の立ち入り禁止措置、吸塵装置付きの丸ノコ等が必要です。
 また、レベル1・2・3に共通して求められるのが、1.建材の湿潤化、2.作業員の特別教育義務づけです。湿潤化は、建材に飛散防止剤や水を吹き付けて繊維の飛散を防ぐためです。作業員の特別教育については次回に掲載します。
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▼シリーズ第3回 特別教育の受講を

 「石綿障害予防規則」は7月1日から実施された新しい法令です。(1)作業員に対する石綿特別教育、(2)解体・改修前の事前調査、(3)保護衣・マスクの使用、などが義務づけられました。前回掲載した「現場の遮断」「吸塵機」などもこの法令での義務化です。

◆受講者以外従事できなく

 アスベスト建材を使った建築物(※1)の解体・改修工事(※2)は「石綿特別教育」受講者以外は従事できなくなりました。
「特別教育」は4時間の講習で、組合では全県50以上の会場で開催しています。年内に限り、1500円の特別料金です。ぜひ仲間に教えてあげてください。
(※1)建築物=ほとんど全ての建物が対象。建物本体だけでなく、配管・ダクトなどの建築付帯設備も。
(※2)改修工事=建材の取り替えを含むリフォーム工事(壁・天井等を一部壊しておこなうもの。クロス貼替え等軽微な工事除く)

◆事前調査必要に

 解体・改修工事には「事前調査」が必要です。「事前調査」は「特別教育」受講者がおこなうべき(石綿ガイドライン)とされています。アスベスト建材の有無を調べるためですから、全建築物が対象です。この調査は、まず目視・仕様書等の確認でおこないます。

◆標識掲示が事実上義務づけ

 環境省が、全解体現場での「標識掲示」を行政指導しています。標識には1.アスベスト建材使用の有無、2.現場責任者氏名、3.作業員の「特別教育」修了日と受講機関名などを記載し、住民に見やすい場所に掲示することになっています。
罰則はありませんが、掲示しないで住民とトラブルになるケースが出始めています。また公共工事やゼネコン・住宅メーカーの現場では、標識掲示は事実上強制になると思われます。さらに、埼玉県では解体現場への立ち入り調査を年30~40回から300~400回に増やすとしており、この点でも注意が必要です。

◆お客さんにどう話すか

 かつては車のブレーキパッドやクラッチ板、ヘアドライヤーやトースターなどの家電製品から、ベビーパウダーまで、アスベストが含まれていました。鉱物ですから、大気中にも1リットルにつき1~2本の繊維が浮遊しています。人間の呼吸は1日8000リットルですから、1日8000~16000本のアスベスト繊維を吸い込んでいることになりますが、大半は排出されてしまいます。
建材には、天井のジプトン・壁の石膏ボードやサイディング・床のピータイル・屋根のカラーベストまで、アスベストが含まれてきました。しかし、成型アスベストは、そのままでは害はありません。発ガン性があるタバコも、持っているだけではガンにならないのと同じです。成型アスベストは、劣化してケバだったり、穴があいたりしなければ大丈夫です。
 注意すべきは、解体・改修工事の時です。「ウチは全員、特別教育を受けていますから、大丈夫」と言えるようになりましょう。

→石綿特別教育・開催状況
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▼シリーズ第4回 石綿の危険性

 アスベスト(石綿)を吸入していると、胸膜や肺に特有の病気が発症したり、ガンが発生することはよく知られています。
 アスベストによる胸膜の変化は胸膜炎、胸膜肥厚斑(きょうまくひこうはん)、びまん性胸膜肥厚です。これらの病気は、悪性の病気ではありません。
 しかし、広範囲に胸膜のゆ着がおこると肺の働きが低下してきます。また、アスベスト吸入後20~30年経過すると、肺ガン、胸膜や腹膜のガンである悪性中皮腫という病気が起こります。さらに、胃ガンや大腸ガン、直腸ガン、喉頭ガンの原因の1つとも考えられています。
アスベストを吸うと、胸郭の内部を覆っている胸膜に線維が付着し、増加して厚くなります。これを胸膜肥厚班といいます。胸膜肥厚斑は、アスベスト以外の原因では起こらないと言われ、過去にアスベストを吸入したことの重要な証拠となります。
 幸いなことに、胸膜肥厚斑は良性ですので、命に関わることはありません。しかし、肺ガンや悪性中皮腫などにかかりやすいといわれています。
 早期発見のために、定期的な健康診断を受けることが重要です。
 アスベストによる胸膜炎が治った後に残った、胸膜の「ゆ着」した状態のことをびまん性胸膜肥厚と言います。胸膜炎は左右に繰り返し起こることから、びまん性胸膜肥厚も左右の広い範囲に起こります。肺の動きが悪くなり、肺活量が少なくなります。

◆10万人が死亡との予測も

 アスベストは、世界では全面禁止が主流ですが、日本では、ようやく2004年10月に法律の改正をおこない全面禁止の流れになろうとしています。
 日本では、過去にアスベストを大量に輸入してきましたが、その約九割は建設建材に使用されているといわれ、私たちの仲間が直接の被害者となっています。
 石綿含有建設建材は、石膏ボード、天井材、外壁材、防火壁、断熱材、保温材、屋根スレート瓦材、波型スレート等あらゆる建材に使われてきました。
 さらに、日本産業衛生学会が、1970年代を中心に、年間30万トン輸入されてきたアスベストの製造や建材の使用が原因で、2000年~2039年に「悪性胸膜中皮腫」で10万人が死亡するとした予測を発表しています。
 まさに私たちの仲間の中で、アスベストによる被害が爆発的に増加することが懸念されます。
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▼シリーズ第5回 労災認定

◆労災認定までの流れ

 じん肺・アスベスト疾患は建設労働者にとっては職業病です。労務不能になった仲間に労災保険の適用は不可欠です。異常(所見)の出た仲間は再度専門の病院へ受診します(二次受診)。その後管理区分決定を労働局に申請します。
 管理区分は、管理1から管理4までの5段階に区分され、管理4または、管理2以上で合併症が認められれば、労災申請の対象となります。
 アスベストを曝露したという医師の証明のある病気(悪性中皮腫・原発性肺がんなど)は、管理区分申請を省略して、すぐに労災申請を行うことができます。
 管理区分申請を行うにも労災申請を行うにも、じん肺・アスベスト疾患などの原因となった過去の粉じんばく露作業を証明するため「粉じん作業歴」を詳細に報告することになっています。作業記録などの保存が極めて重要となります。

◆肺ガンで申請ができる人

次のいずれかに該当する人は、申請できます。

  1. アスベスト(石綿)肺がある。
  2. アスベスト(石綿)肺の所見はないが、アスベスト(石綿)曝露十年以上で、なおかつ臨床所見(肺の持続性捻髪音、胸膜肥厚、喀痰中アスベスト小体など)がある。
  3. アスベスト(石綿)肺の所見はないが、アスベスト(石綿)曝露十年以上で、なおかつ病理所見(肺のびまん性線維性増殖、胸膜肥厚または石灰沈着、肺組織のアスベスト(石綿)線維またはアスベスト(石綿)小体)がある。
  4. 上記以外でアスベスト(石綿)曝露が比較的高濃度かつ短期又は間欠的である場合。(アスベスト(石綿)吹付け、アスベスト(石綿)製品での断熱被覆、アスベスト(石綿)製品を被覆材又は建材として用いた建物・船舶補修又は解体、アスベスト(石綿)製品の加工工程での切断などと同程度のアスベスト(石綿)粉じん曝露がある作業)

◆悪性中皮腫で申請ができる人

・胸膜または腹膜の中皮腫の人は、次の1.又は2.に該当すれば認定。

  1. アスベスト(石綿)曝露一年以上で、なおかつアスベスト(石綿)肺がある。
  2. アスベスト(石綿)曝露一年以上で、なおかつ病理所見(肺のびまん性線維性増殖、胸膜肥厚または石灰沈着、肺組織のアスベスト(石綿)線維またはアスベスト(石綿)小体)がある。
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▼シリーズ最終回 アスベスト曝露を認めさせるために

◆記録に残して

1.アスベスト曝露現場を確定し、作業内容を明確に

 医療機関の医学的証明と共にアスベスト(石綿)曝露を証明する方法として、アスベスト曝露現場、作業内容を明らかにします。
 じん肺の管理区分、労災申請と同じように、過去のアスベスト(石綿)曝露の作業歴を年代別に細かくまとめます。労災申請は、元請責任を追求しますので、「元請がどこ」で、「現場はどこ」なのかを明確にします。アスベスト(石綿)曝露後すぐ発症する病気でないため、一定の曝露期間(肺ガンは十年、中皮腫は一年)が問われます。したがって、過去にさかのぼって明確にすることが求められます。

2.アスベスト含有建材名を明確にすることも重要

 また、現場名、元請を明確にするとともに、実際に使用していたアスベスト(石綿)含有建材名も特定すると、審査がスムーズに進行します。最近は、ノンアスベスト製品といって建材が出回っていますが、建材を結合(貼り付け)作業等に用いる接着剤(ノリ)等にアスベスト(石綿)が含有されているものがあります。建材のみで判断せず、接着剤等も明確にする必要があります。

◆この間の到達

 埼玉土建では、現在まで18人のじん肺・アスベスト疾患の労災認定を勝ち取っています。
 町場の大工の仲間(三郷支部)は管理区分申請から3年をかけ03年1月、県で初めて大工のじん肺の労災認定を勝ち取りました。
 また、野丁場の石工の仲間(朝志和支部)は、最終粉じん作業現場の元請である清水建設に証明書を発行させ、労災認定を勝ち取っています。
 労災認定を勝ち取った18人の内、8人はアスベスト疾患による認定です。
 アスベスト被害は、症状が急変することがあり、労災認定者の8人の仲間の内、7人はすでに亡くなっています。さらに、その内4人は労災認定がされる前に命を落としています。
 組合では、関係機関に早期の労災認定をするように交渉を強めていますが、支部では、労災申請が必要な仲間については「命にかかわる取り組み」という意識で早急に対応することが求められています。
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